カニの記録 19

 

銭湯と掛け持ちのバイト、なるべくなら時給が良い方がええなとハローワークの求人見てたら、不動産いっぱい持ってる会社の物件清掃とか修繕、日曜大工くらいの技術でなんとなります、時給1500円〜2000円ゆうのがあり、時間の都合もそれなりに聞いてもらえそうかもと思い申し込む。数日後に会社から電話あり、なんかめっちゃ滑舌悪く、ぶっきらぼうで早口、不動産関係で働く人っていうか、ビジネス社会の中心でちゃんと仕事してる人のスピード感てこんな感じなんかなぁとか思ったりする。

 

指定された面接の場所は会社とは別の、神戸の高級住宅地、Googleで調べると鉄筋コンクリ打ちっ放しのどデカイ邸宅、監視カメラとかも沢山ついてる家だったので、これはあれだなと思いながら、とりあえず面接行ってみたら、やっぱりあれな感じだった。 ツヤツヤですばしっこい黒トカゲみたいな見た目の会長は、終戦の翌年に5人兄弟の次男として生まれ、明日にも飢え死にしそうな貧困の幼少期を経て、13歳で丁稚奉公、20歳から会社で働き出したあとは「仕事で一度も失敗したことはない」と本人も仰ってたけど、それくらいのスピード感で財産を積み上げたっぽく、面接で通されたリビングのゴッドファーザー感が人生を物語ってるなと思った。

 

会長から言われたバイトの職務内容はハローワークの求人票の内容とは少し違って、いわゆる下男、小間使い的に自宅や別荘の掃除や修繕をする人間を求めていたっぽく、でも私はそうゆうのはちょっと無理だったし、会長も私がそうゆうノリの人間ではなさそうだなと判断してくれて、すんなり面接は終了。黒光りしたソファーに両腕を伸ばして凭れながら「なんで皆んな若いうちにもっと苦労しないんだろな、俺が君の年齢だったら、今の俺よりもっと儲けられる自信があるぞ、俺にはそのスキル?スキル!があるから」と言っていた。飢えを経験した人はやっぱり強いなと思うが、それはそれ、会長は会長だし、私は私、私がアフリカの難民として生まれた設定で、私は生きれない。

 

翌日。今度は会長の息子さんから電話があって、神戸の会社へ面接に行った。最初の電話の早口の人は会長の息子さんで、おそらくは会長の仕事の一部を任されてるんだろう。息子さんの見た目は半グレ風、会長よりもっとトカゲ具合が増した感じの人だった。私が席に着いた後も面接はさておきな感じで、掛かってくる電話に早口で応答している。家族構成や必要な収入の額など聞かれて答えると、(あんたそんな考えで家族養えんすか?頭大丈夫すか?)的な感じで「ぶっちゃけ、世の中金じゃないすか」と言う息子さんを見ながら、ゴッドファーザーで一番最初にヤられる兄弟は多分この人なんだろうなと思ったりした。たしかにぶっちゃけ金とも思わなくもないし、実際にお金の心配ばかりしてる自分の生活を考えると、自分の頭に自分で靄をかけたくなった。普段会えない人と会える機会がいきなり出来たりするんが求人面接の面白いところだなと思う。その後、面接から戻って血眼で求人サイトをハイスピード縦スクロール。

 

 

先週土日は浜松と愛知県犬山市でライブ。関西から浜松へ出てる昼間の高速バスがないので新幹線で移動。新幹線で私の斜め前に座ったおばはんは髪の毛を紫に染色した、ネズミ講でええポジションに居りそうな風情の人で、背もたれを倒す際の遠慮の仕方に意地悪さが含まれてて、私の隣に座ってた人もなんとなく怪訝な表情をしていた。普通に生きてるだけで毒を撒き散らす様な人間ているけど、社会そのものがネズミ講みたいなもんかなと思ったりもする。浜松で新幹線を降り、宿泊するビジネスホテルに行くと受付で4〜5人の団体客がフロント係と揉めてて、その団体の中に新幹線のおばはんが居た。

 

 

自分の生活圏をおばはんと別にするにはお金が全てのトカゲになるか、草に埋もれて寝たのですになるか、なんかどっちも嫌だなと思いながら、また頭に靄。

 

 

浜松駅から路線バスと徒歩でライブお世話になるエスケリータ68に到着。平和で優しい世界が広がっていた。西日背にするエスケリータ夫妻の背中を見ながら、私の心がふんわり和らいで行くのを感じる。優しさ最高。

 

 

エスケリータ夫妻が先日神戸にきたとき、雨降ってたけど立ち飲みをご一緒し、其の場凌ぎの適当な会話で楽しくさせてもらった。その日夫妻は人生相談みたいな感じの要件で神戸を訪れてて、もともとイラストが上手なエスケリータマダムさんは相談役の人から「これからはエロ」とイラストのモチーフを勧められたらしい。黒板に描いてるカレーのナカムラタツキさんのチョーク似顔絵も、どことなくエロい気がした。

 

 

ナカムラタツキさんのエロいカレー。うまかったのでライブの前後で2杯食った。これはタイ米なんかな。90年代中頃の米不足のときにタイ米がすごく流行ったけど、あの時は本当に米不足だったんだろうか。ナカムラさんのカレーにタイ米はすごく合ってた。

 

 

対バンのシンムラテツヤさんがリハーサルしてるのを見て、きっとベックとかが好きなんかなと思って聞くと、ベックが好きとのこと。私も最初はベックみたいなことをしたくてカニコーセンを始めたけれども、人にはそれぞれもともと備わってる役回りみたいなのがあって、私はベックじゃなかった。演奏を失敗することがライブの醍醐味とシンムラさんは仰ってて、そうゆう考え方もあるんだなとマジ衝撃だった。私もそんな風にライブをしたい。

 

 

お客さんにライブ盛り上げてもらって、物販もたくさん買ってもらって、浜松駅まで車で送ってもらって、なんか優しさに包まれた夜だったなぁ。ペット焼酎とカップ氷買ってビジネスホテルに戻り、NHKで‎半藤一利いう作家さんのドキュメンタリー見ながらいつの間にか就寝。いつでもどこでもよく寝れる。浜松の皆さんありがとう。

 

 

9.10(日)夏の終わりのハーモニー②

場所)神戸 自転車屋ポート

   神戸市中央区相生町5丁目1−3

live)田渕徹 / カニコーセン

    1回目14:00 / 2回目17:00(投げ銭もらいます)

food & drink)patisserie et..ARUKUTORI / tent-coffee / 大衆スパイス居酒屋ニューヤスダヤ / BREADMAN / TARUMI KAKI-KORI STAND

時間)OPEN11:00 / CLOSE19:00 

 

 

 

 

 

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